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<い>祈る
 人間の力だけではどうにも及ばないと思える中で、なおも望みが叶えられるように念じること。
 自分に深くかかわる事柄であればあるほど、放っておけないという思いに駆られて、良い結果を得ようと立ち向かいます。しかしながら、思い通りの結果を手にすることはまれで、自身の非力さを思い知らされることがしばしばです。そういう状況下でなお希望を捨てることができないままに、人間を超えた何ものかに縋り、その加護を祈るわけです。
 何に向って祈るか、祈る対象が明確にならなければ祈れないということはありません。祈らずにいられない、内からの催しに突き動かされて祈るのです。祈る存在たりうるところに人間の価値を見出す思いがします。
 他者との絆が大切であることは分かりつつも、他面それが「ほだし=束縛」として作用するために、反発する心理が生れることも否定できません。いろいろな制約の下で折り合いを付ける練習が大人になる上でどうしても必要なのですから、傷を付けたり付けられたりというかかわりの中にも自らの成長を祈り通し、また自分が祈る以前から祈っていて下さるいのちの親神様に出会わせてもらえるようでありたいものです。
 何事によらず無関心に徹してしまえば、祈ることもなくなってしまいましょう。同時に、祈られていることも分からなくなりましょう。祈ることは自分と自分以外の存在、とりわけ自分を生み出したいのちの親としての全体世界との関係を深める取り組みに相違なく、生物学的なヒトにとどまることなく人間として成長していく上で、不可欠の営みだと言うことができます。

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