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<は>腹立ち
 思い通りにならないことに苛立つ感情のこと。
 金光大神は、「腹立ちを抑えているのではまだ足りぬ。腹立ちを知らぬという境地にまで進め」と理解している。自己中心の生き方から全体の立ち行きに奉仕する生き方へ、生まれ変わりを願う信心の数ある修行のなかでも、腹立ちの解消はかなり手こずる宿題となっています。
 私憤は単なる己の欲望を満たそうとしているに過ぬものながら、義憤は全体の助かりを願って自己犠牲も辞さないという、腹が立つにも公私の違いを指摘することができます。怒りや憤りが生存の条件をよりよいものに変革する働きを起こすこともあるのですから、腹立ちを知らない人間ばかりが集まればよい社会が生まれると断じることはできません。すでにある社会の仕組みなり価値観なりは、支配的立場にある人々にとって有利なものであり、支配される立場にある人々がそれを全面的
に受け入れてひたすら奉仕するところに助かりがあるとする宗教がもしあるとすれば、それはその体制下で奴隷として生きることを理想とするのであって、とうていいのちの願うところとは合致しません。
 異議の申し立てを禁ずる体制下では、暴力的な変革に及ぶことも歴史上繰り返してきたところです。親神様から賜ったお役目として異議の申し立てができるように、体制としてもそれを受け入れて自らをよりよいものに仕上げていくように、民主主義社会の成熟のために訓練を積んでいくことがいるのだと思われます。
 

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