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<お>鬼
 
妖怪の一つ。「おに」とは正体をつかみかねるという意味であって、実に多様な現れ方をしており、単純に悪者とは決めてかかれません。多くの鬼に共通しているのは、「おどろおどろしい(不気味)」「怪力」「問題を露わにする」といったイメージです。
 陰陽道では艮(うしとら=東北)、坤(ひつじさる=西南)の方角が鬼の出入り口(鬼門、裏鬼門)とされて、災難を避けるためにこの方角に特段の禁忌を設けています。一般的には鬼が厄災をもたらすと信じられていて、節分には豆をまいて鬼を退治するのが伝統行事になっています。まったく逆に、家屋の屋根に立派な鬼瓦を載せる習慣は、災難をもたらす鬼の侵入を阻止するためと考えられます。鬼が悪霊を追い払い、人に幸福をもたらしてくれる存在と考えている例が少なくないのも事実です。
 このように「よい鬼もいる」という事例が生まれて来るのは、敵対し排除する関係がすべてではなく、助け合って共に生きる関係を結ぶことによって、鬼の絶大な力を味方につけることが可能であることを示唆しており、助かる関係の構築を目指す上で有意義な物語として語り伝えられてきたといえましょう。
 自分に厳しく当たってくる人物に「鬼の」という形容詞を付けたりしますが、自分育てを願う信心の上からは、願っても無いトレーナーを差し向けて頂いたと受け止めて、よい応答関係を築き上げていくように努力したいものです。
 ねたみ、保身といった、心の中に住む鬼といかに向き合って生きて行くか、信心の課題を突きつけてくれるのも鬼なのです。
 
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