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<も>物語
 複数の出来事を時間の流れの中において結び付け、特定の視点に立ってその意味を探求し、言語をもって構成・表現されもの。ヒストリー。「誌」と翻訳される場合がある。
 フィクション性を強調する意味で「歴史は物語である」と言われたりしますが、それは目的に応じて操作し、自己を正当化するために語られる物語であって、万世一系の物語には天皇を産んだ母方の血筋は不問とされ、大東亜共栄圏の物語では「侵略」が「進出」と言い換えられ、権力の都合に合わせて恣意的な構造化が図られてきた例が枚挙にいとまなしです。
 生者死者を問わず、目の前にいない人物あるいは過去の事件について資料等痕跡をたどりながら物語を編んで、その果たした役割等を明らかにし後世に伝える営みが歴史であるとするならば、そこに記述者の立場や意図から来るゆがみが存することは明白であり、たえずそこに反証を受けて行く「開かれた」あり方をもって公共性を獲得し続けていかなくてはならないと識者は指摘しています。
(参考書:野家啓一「歴史を哲学する」岩波現代文庫)
 信仰をめぐる物語には、その絶対性を揺るがすことを許さない、厳格な服従を求める態度が付いて回ります。実在しない赤道や日付変更線を在るかのように信じているのと変わりないとも言えば言えますが、合理的な受容を不可能とあきらめさせる神話には、魔物がいると言ってもよいでしょう。
 金光教祖金光大神の物語は、民間信仰の一、金神信仰から発してその悪神性、地域性、因果応報観などが相次いで破れる出来事を経て、神観、人間観、世界観の刷新を実現し、見放されることのない親神のもとで応答関係を深めそれに伴う現実生活の立ち行きを実証せられた跡をたどり、生死を越えて救済される道を明らかに伝えています。追体験を通してその有効性を自得していくことが、信心のけいこの中身となります。
 

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